初めて出会った君は、とても目立つ容姿をしていた。
長いまつげに潤んだ大きな瞳、少しはにかんだような紅潮した頬、
そして唇はしっとりと濡れて息づいていた。
「こんにちは、はじめまして!長峰です。 よろしくお願いします!」
女子高校生らしいハキハキとした物言いで、輝くような笑顔を向け挨拶をしてくる。
「ああ、古参の東條です・・・えと、よろしく・・・・」
僕は若干まごつきながら、なんとか返答を返したと思う。
彼女は美しかった。 可愛いというよりも、ただただ綺麗だった。
とは言えその頃僕は、予備校時代からの先輩に熱烈に恋しており、彼女に対しては美しい、と言う以上の感情は持てなかった。
そんな僕に人懐こい目を向けながら、君は無邪気に色んな話をしてくれた。
彼氏にこりて、当分恋はしたくないこと。
陸上を頑張っていること。
脚が太くなることが悩みなこと。
意外と甘いものはあまり好きではないこと。
そして20歳までには処女でなくなりたいことー
「チャンスはなかったん?」
僕が聞くと
「いえ・・・・でもなんか、この人は違うかな・・・・って。」
そんな事を言うと、少し寂しそうな顔をした。
彼女は優しかった。
件の先輩にフラれてしまいひどく落ち込んでいた僕を、君は優しく癒やしてくれた。
「私なら絶対、先輩を振ったりせぇへんのに!」
そんな事を言って怒ってもくれた。
彼女と親密になるに連れ、僕にも特別な感情が芽生え始めた。
そんなあるとても暑かった夏の夜。
珍しく店に独りしか最終まで残っていなかった僕は、それなりに忙しく店じまいの準備を進めていた。
そこへ何故か、真っ白なTシャツ姿の君がふらっと現れた。
高校生だった彼女は短大に進学し、しばらく前に20歳の誕生日を迎えたばかりだった。
「今日も暑いなぁ・・・・・」
そんな事を言い、Tシャツの首元をパタパタと扇いでいる。
「こんな夜中に・・・・何もすること無いんかいな?」
僕が何の気無しにそう聞くと、
「彼氏もおらんのに嫌味なん・・・・?」
そう返すと少し僕を恨めしそうに見てくる。
「あ~~あ・・・・結局処女でハタチになってもうたし・・・・」
そう彼女は言い、頬を膨らせた。
「別に悪いことじゃないやん。」
僕は彼女の方を見もせずそう返した。
「・・・・そうやけど・・・・・」
彼女は不満そうに俯き、言う。
しばらく僕が閉店作業をしていると、「あのさ と彼女が言い、手招きして僕を呼びだした。
「ん?」と僕が彼女を見、そばに寄っていくと
「わたし今ノーブラなん」悪戯っぽく下から僕を見上げ、彼女は笑顔を向けてくる。
僕は「へえそうなんや」と言い、彼女のTシャツの首周りに指をかけ引き、胸元を覗き込み「処女のおっぱいやな」とうなずきながら言う。
彼女はとたんに真っ赤になり「そんな事してええなんてわけないやん!!」 と言って笑いながら怒り僕の胸を叩く。
その日見た薄く、儚い彼女の淡いトガリ 今もたまに思い出す。
僕らはあの日あの時、あの場所に
確かにそこにいた。
熱い感情を持て余しながら
--- period. ---
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